心臓バクバク、手に汗をかきながら、スマホの文字をタップする。
落選
はあ、そうかーー。
しかたないよなあ。
行きたかったなあ。
いつ当たるんだろう。
それもそのはず。
今をときめく国民的男性アイドルグループ。
歌やダンスがトップレベルなのはもちろんのこと、テレビ、CM、映画、ドラマ、バラエティで活躍する彼ら。
応援する年齢層も幅広い。
さらに9人グループのため、9人分のファンが年に一回のドームツアーに殺到するのである。
そんな苦い思いをした去年。
今年も同じように手に汗を握った結果!
さて、運命の
結果は
当選
!!!!
神様!ありがとう!
見ることができるんだ、この目で。
推し様を拝めるんだ。
歌やダンスが見られるんだ。
しかも9人同時に会えるんだ。
もうすでに泣きそう。
しかし、ライブに行くまでに私が越えなくてはならない関門はいっぱいあります。
見慣れないデジタルチケットで入場できるのか、子どももわたしも風邪をひかずに当日を迎えられるのか、こんなアイドルのライブおっかなびっくりだけど、まわりから浮かずに楽しんでこられるのか・・・。
この記事では、メディレトライターである40代主婦のふみこが、はじめて国民的アイドルのライブを観に行くとどういう惨状になるのか?がわかります。
(新年あけまして1本目なので、新春の初笑いと思っていただけたら嬉しいです!笑)
今回、唯一、共通の話題で話せる友達は別な友達に誘われて隣同士(連番というらしい)で席をとっていたので、私は1人で参戦しました。
それはちょっと寂しかったので、この画面の前のあなたが、文章の中だけでも、わたしと一緒にライブに行って、同じ興奮を味わっていただけたら嬉しいです!
さあ、一緒にライブに出かけましょう!
作ってしまいました、推しうちわを。

大晦日。
日本じゅうの人が、おだやかに年越しをするであろうこの日に、わたしの心はおだやかではありませんでした。
それも、妹が放った、
「うちわは作らないの?」
と言う一言からでした。
うちわって、あの、名前とか書いてあるやつ・・・?
蛍光色や太文字の、派手なかんじの、あれか。
なんか恥ずかしいな。わたしがアレを振っても大丈夫かな。
いや、そもそもドームなんて人数多すぎて推しの目に入らないのでは。
まず、どうやって作る?
SNSを見ると、とても綺麗で豪華なうちわを、簡単そうに作っているお姉さんたちがいっぱいいる。
不器用なわたしがライブまでに完成させられるのか。
さて、そんなこんなで、大晦日の昼間から、帰省した実家にて、静かな制作が始まりました。
この文字サイズ小さい?この背景は合わないかな、印刷はどんな大きさでどうやってするんだ?
「コンビニで印刷すればいいよ、乗してってあげるから」
と言ってくれる妹に連れてきてもらったコンビニ。
疑問たっぷりなわたしは、妹に横に張り付いてもらいながら、ひとつひとつ深呼吸しながら手順通りに進めて、なんとか印刷完了。
印刷機からは黄色い背景に黒文字の、どでかい名前が排出され、小銭のおつりでモタモタするわたしを横目に、妹がそそくさと隠しながら手に持ってコンビニを出てくれる。
さて、夜から制作開始。
息子たちはテレビに釘付けなので今がチャンス。
「これはのりだけじゃいかん!剥がれるから、両面テープも使って貼って!」
元保育士で、工作が得意な母の知恵を借りながら。
「ほう、何やっとる?」
大晦日、お酒の入った父が大きな声で聞いてくるので、とっさに「シー!」と合図して制す。
わんぱくな男児2人にこれを気付かれたら、ひとたまりもない。
「ぼくもやるー!」となって無茶苦茶なうちわが誕生するでしょう。
そんなこんなでギリギリ年が明ける前に、「推しうちわ」が完成しました!
「あけましておめでとう」と言うよりも、
「できましておめでとう」と言いたい気分です。
こ、このコーディネートは・・・?

ライブに行く前の大きな関門。
それは、「何を着て行くか」。
SNSを見ると、リボンがついた黒のブラウスに、黒いミニスカート、黒いブーツで、すごく可愛らしい格好した子がいて。
そうか、推し色で全身コーディネートしてるんだな!
さすがにミニスカートは無理だけど、全身推し色コーデ可愛いから真似したい!
たぶん会場にもそんな人がいっぱいいるはず!
わたしの推しのメンバーカラーは・・・
黄色。
結婚してからというもの、家庭中心にお金や時間を使っていたため、流行りの可愛い服などは、ほぼ持ってないわたし。
実家のタンスの引き出しを全部開け、ありったけの黄色っぽい服を出していきました。
そして上下、黄色で揃え、鏡も見ずに、妹の前に出てみました。(必死)
妹「・・・変ではないけど、違うのがいいよ」
気になるわたしのコーデはこちら↓

そうですよね。
冷静に考えたら
「今日は上下真っ黄色でコーディネートしよう!」とはなかなか思いませんもんね。
流石にスカートの色を変えて、バランスをとることにしました。
(これに黄色のバッグで行こうとしていた)
子どもを夫に任せ、いざ出陣。

バタバタと準備していたら、いよいよ当日。
「なんとか、なんとしても、なにがなんでも、この日だけはお願い!」と夫に頼み込んで、在宅勤務の日にしてもらい、帰宅した子どもたちを見ていてもらうことに。
ふだん激務の疲れもあって、「子ども見ててね」と言って任せても、5分後にはいびきをかいている夫に、「家の中をSASUKEのセットみたいにしたい」が口グセの息子たちを託して、いざ出陣!
地下鉄の乗り換えを間違えないように、何週間か前からシミュレーションしたコースを、何度も頭に描く。
目的の駅に着き、改札を出ると、たくさんの女性が向かう波のような流れがある。
大丈夫だ、道がわからなくても着いていけば着けそう。
バックには推しのぬいぐるみをつけていたり、中には推しと同じピンク色の髪に染めている子も。
それぞれの応援のしかた、それぞれの高揚感を胸に秘めて向かっている。
全然知らない人たちなのに、これから同じ時間に同じものを見て、同じタイミングで拍手をして、同じように叫んで感動するんだなと思ったら、昔から親しい人のような、ちょっとした一体感を感じた。
地上に出ると、視界を占領する大きなドーム、近未来的な、非日常な世界がぐわっと広がる。
女性たちの波は、引き寄せられるように、その半球体へ吸い込まれていく。
周囲には、屋台のようなグッズ売り場や、のぼりが見えてきて、その付近も人でごった返している。
全身黄色の人はいないな。
みんな割と落ち着いた色味で、推し色をピンポイントで入れるなど、さりげないお洒落をしている。
妹の言うことを聞かずにいたら、わたしは確実に黄色いやばいおばさんになるところでした。
そこへ、夫からLINE。
「子供たちが、ママはどこへ行ったって聞いてるけど、なんて言っとけばいい?」
「ママはおしごとに行ったって言っといて」
「了解」
おしごと。
そうです、「推し事」、楽しんできます!!
WCという文字が、あんなに恋しいなんて。

隣接の商業施設のカフェで休み、さて、トイレに行っておこう。と、近くのトイレに行くと、
「え、なにこの列!」
フードコート横のトイレはさすがに混んでるのか、ひとつ上の階のトイレに行こう。
しかし、さっき以上の大行列。
みんな考えることは同じなのか。
じゃあ早いけど、会場のトイレへいこう。
不安なので、受付で出せるのか何度もシュミレーションしたスマホのデジタルチケット。
なにこれ、紙のチケットじゃないの?もし出せなかったら入れない?スマホが急に壊れたら無効ってこと?どうしよう、どうしようと軽くパニックになっていたが、ドーム入り口の受付で見せると、「はいどうぞー」とあっさりと入場できた。
発券された席番号を見ると三塁側のスタンドらしいが、方向音痴なのと、構造などよくわからないのでイメージできず。入場できただけで今日のわたしは完璧です!
ひとまずはトイレに行っておこう。
見知らぬマダムと、トイレへの結束が芽生えた瞬間。

さて受付を通った後に、目に入るのはまたもや、ものすごい行列。
グッズ売り場は外だし、みんな席にもつかずに入り口付近の通路を使って、何に並んでるのと思ったら・・・
トイレです。
丸いドームの形状に沿うように、整列させられた人の列がぐるり。
どこが列の最後尾なのかここからでは見えず、人を縫って、所々にいるスタッフを探す。
「お手洗は33ゲート入り口付近まで列が伸びているので、そこまで行ってください」
28、29、30とゲート番号を数えながら小走りで向かう。
それらしき場所に並んでみたが、列がたくさんありすぎて本当に正解の列かわからない。
すると。
突然、60代くらいの見知らぬマダムに、声をかけられる。
「ねえ、これって、ほんとにトイレの列?」
「たぶん、そうだと思います」
「これ長すぎない?どれだけ時間かかるのよ、他のドームでは、こんなではなかったはずなのに」
早口でまくしたてるマダムに圧倒されながらも、ここは同じグループを好きになった同士。
トイレという都までは長旅になりそうなので、マダムに質問を振ってみる。
「あの、誰が推しとか、ありますか?」
「わたしはAちゃん推しなの」
「Aちゃん、気象予報士の資格も持ってて、賢くて優しくて素敵な人ですよね」
「そうそう、努力家なところが好きなのよ、あなたは?」
「わたしはIくん推しです」
「ああ、自分を犠牲にしてでも仲間のために頑張るところが素敵なのよね、わたしもそういう人好きよ」
数秒前に出会ったとは思えないほどの力説で、私の推しの魅力を語ってくれるマダム。
関西出身、静岡在住と話す彼女は、朝早くから新幹線で来ており、高齢の母親と2人で参戦。
グッズを買うのが大変だった話、昔から推しているがなかなかライブに当たらない話などをし、今日の座席も近くであることがわかった。
「あっ、トイレのマークが見えてきましたよ!」
と言ったも束の間、列はトイレを通り過ぎる。
うそ!と思いながら進むと、列にはロープが張ってあり、折り返して並んでいる人たち。
ここはディズニーか。
これは、何十分並べば辿り着くのか。
でも、わたしは体感でわかる。
この義理母と似ている話し方、このトーク好きな感じ。
話をしていたら、たぶんすぐな気がする。
「今日は子どもを夫に任せてきたんです」
「あら、あなたお子さんいるのね。普段子育て大変なんだから、こういう楽しみもなきゃだめよー」
そう言われると、ちょっとホロっときてしまう。
やっと、WCの文字が近づいてきた。
ここで確実にトイレの列だったとわかる。
「なんかあっという間だったわ」
「そうでしたねー」
待望の女子トイレが目の前なのに、なぜか案内された男子トイレを使用することになって驚いたけれど、これも非日常の体験。
かくして、トイレに並んだのは45分でしたが、無事にトイレを制覇し、あとは「座席を探して着席する」というファイナルステージを残すのみとなりました!
みなさん、ご声援をお願いします!
ねえ待って、無理、しんどい。

開演15分前。
わたしは方向音痴のため、マダムたちがトイレから出てくるのを出待ちし、一緒に席に向かっていただくことに。
「あなたの席、ここよ」
と聞かなくても全て教えてくれるマダムの力を借り、無事着席。
本当にありがとうございました!
一度、夫に連れられて野球の試合観戦に来たことがあるこの会場は、同じ建物なのに今日は全くの異空間になっている。
日曜昼間の家族が集まってきたお祭り感もないし、ビールを飲みながらヤジを飛ばすオジサンは皆無。
全体的に薄暗く、煙草のスモークが漂っているような空間。
ペンライトを付けはじめている人がチラホラいて、暗闇にボヤッと浮かび上がる赤や青の灯りは、ここにしかない幻想さを作り出していた。
この日のためだけに用意したペンライト、うちわ。一瞬だけでもあの人の視界に入るために努力した跡。
みんな、「持っている」というより「握りしめている」。
女の子が、好きな人に告白するために、校舎の裏で彼を待っている。
そんな、神聖で張り詰めた空気がドーム内をピリッとさせていて、わたしの気持ちを加速させた。
恥ずかしいとか言ってられない、わたしもペンライトとうちわを取り出し、周りと同じ温度で握りしめる。
スタンド三塁側。
傾斜があり、視界は良好。
アリーナのような近さや派手さはなく、メインステージは遠いけれど、全体がよく見える。
ほどなくして、メインビジョンに大きく数字が現れた。
さあ、あなたも一緒にカウントダウンお願いします!
5
4
3
2
1
重低音が響いたと思うと、白い煙の向こうに、ゆっくりと浮かび上がる9つの影。
はじけるような歓声が方々から上がり、何度も繰り返し聴いた大好きな曲が、大音量でドーム内を包んだ。
曲に合わせて、暗い会場に9色のペンライトが一定のリズムで波打ちはじめる。
あの人がいる。
綺麗な歩き姿、メンバーと絡む可愛らしさ。
「ほんとにこの声で話すんだね・・・」(当たり前)
画面越しで何度も見てきたはずの一つひとつが、キラキラして、眩しくて、この世のものとは思えない美しさ。
夢見心地で聴き入っていると、遠くのメインステージで歌っていたはずなのに、何やらステージが動いている。(ムービングステージと言うらしい)
おお、なんか近づいてくるではないか。
ん?ち、近いぞ。
え、目の前に。
推し様が半径5メートル以内。
ステージがわたしの目の前付近で停止。
なんと、推しの映画の主題歌の曲を、わたしの目の前で歌い始めたではないか。
アイドルの歌詞では当たり前にある「好き」や「頑張れ」という言葉が、彼の声色に乗って、直に胸に響いてくる。
こちらの気持ちも届け、と言わんばかりに、名前うちわを持つ手に力がこもる。
そして曲の中盤に差し掛かって、フォーメーションが変わる。
推し様がこちら側に向きを変えた。
推し様がわたしの方を見ている!!(ように感じる)。
そして、わたしのうちわを見つけて、嬉しそうに手を振ってくれている!!!(ように感じる)。
もうその瞬間、
「キャーーーーー」
と叫んでました。
ヒトって、本当に驚いたときは声が反射的に出るんですね。
まるで幽霊でも見たかのように。
もう叫ぶでもしないと、この胸で受け止めきれないので、なんとか叫んで逃がしてる感じです。(伝わるでしょうか)
普段出ないホルモンがドバドバ出るのがわかりました。溶けて無くなりそう。
想い人と目が合うってこんなにドキッとするものなんですね。
わたしに愛を直接くれようとする感じ。もう呼吸できません!
ちっぽけな40代主婦に、神様がご褒美をくれたのでしょうか。
ありがとうございます!!
このような状況になってしまうと、「かっこいい」以外の単語が脳内から消えてしまったと錯覚するくらい、ほぼそれしか言えない体です。
これはもう推しの魅力というより、推しの魔力。恐ろしい!
でも勘違いでもいい、幻でもいい。
あのとき目が合った。
たしかに力をもらえた。
明日からも頑張れる。
その後も、トークに笑い、火の演出に驚き、一緒に歌ったりしているうちに、もう終演時間。
夢のような空間に名残惜しさを感じながら、会場を出ました。
最後に

ここまで読んでくださったあなた、私と一緒にライブを体験してくれてありがとうございます!
これで一人参戦の寂しさも消えて楽しい思い出となりました!
彼らが3時間ほどのライブの中で、飽きさせないように、幸せな気分で帰ってもらえるようにと、歌にダンスにトークに、滝のような汗を流しながら走り回って楽しませてくれたように、私も読んでくれた人を、最初の行から最後の行まで楽しい気分でお連れできていたら幸いです。
(帰宅後のリビングが地獄絵図だったのは言うまでもありません。子どもが怪我などしていなかったのが上出来で、冷蔵庫に大事にしまっていたプリンがなくなっていた程度の損害でおさまりました。)


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