最近経験した怖い話を、ひとつだけ紹介させてください
最近、少し怖い出来事がありました。
ずっと頭の片隅に残っていて、ひとりで抱えているのも落ち着かないので、ここで供養させてください。
席を外しているあいだのこと
その日、私は原稿を書いていました。
特別に忙しかったわけでもなく、締切に追われていたわけでもありません。
ただ、ある一文に引っかかって、画面の前で手が止まっていました。
何度か書き直してみても、どうにも気に入らない。
少し気分を切り替えようと思って席を立ち、キッチンでコーヒーを入れました。
そのまま少しだけ、何も考えずに過ごしていたと思います。
10分ほどして、席に戻りました。
画面を見て、私は一瞬、手を止めました。
さっきまで悩んでいた一文が、きれいに整っていたのです。
言葉の流れも自然で、「このほうがいい」と思える形になっていました。
ただ、それを直した記憶がありませんでした。
念のため編集履歴を確認すると、私が席を立っていた時間帯に、確かに修正が入っていました。
自分で直したのかもしれない。無意識に手が動いたのかもしれない。
少し驚きはしましたが、そのときは「疲れているだけだろう」と考えることにしました。
鍵を閉めたはずだった
郵便物を出す予定があったため、原稿を保存して部屋を出ました。
マンションのエレベーターに向かって廊下を歩いているとき、ふと違和感に気づきました。

家を出るとき、鍵を開けた覚えがない。
マンションの部屋の鍵が、開いていたのです。
私は不安症で、一日に何度も鍵を確認するタイプです。
その私が、鍵をかけ忘れるだろうか。確かに、今朝は閉まっていたはずでした。
一瞬、「誰かが入ったのかもしれない」と思いました。
でも、真昼間に部屋に入り、何も取らず、荒らしもせず、文章だけを直して帰る人がいるだろうか。
それとも、まだ何も取られていないだけで、どこかに誰かが隠れているのか。
どれも現実的ではないのに、どれも完全には否定できない。
考えがそこまで進んだところで、胸の奥が、じわっと冷えました。
本当に怖かったのは…
ここで、ひとつだけ種明かしをさせてください。
今読んでもらった話は、私が体験した出来事ではありません。
AIに書かせた「作り話」です。
ただし、「怖い話を書いて」とだけ頼んだわけではありません。
このメディアで公開されている、私の過去のコラムを読み込ませたうえで、「この人っぽく書いてください」と伝えました。
私は、ほとんど直していません。
いま読んでいるこの文章も含めて、です。
最近あった一番怖い話は、AIが怖い話を書けるようになったことではありません。
私が書いていると思って読まれていた文章が、最初から、私の手を離れていたことでした。


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