私にはおじいちゃんとおばあちゃんが3人います。
父方の祖父母と、母方の祖母です。
みんな認知症があったり体調を崩していたりして、去年それぞれ介護施設に入ることになりました。
今回は母方のおばあちゃんのことを書こうと思います。
おじいちゃんが亡くなってから進み出した認知症
母方のおばあちゃんは、10年ほど前から軽度の認知症を患っています。
7年ほど前におじいちゃんが亡くなったことをきっかけに、症状は少しずつ進んでいきました。
最初の頃は短期記憶が難しくなる程度で、普通に会話もできていました。
しかしその後、生活の中で困ることが少しずつ増えていきました。
ポットを火にかけたままにしてしまったり、アイスを冷蔵庫に入れてしまったりすることもありました。
ヘルパーさんにも来ていただいていましたが、週に数回の訪問では足りなくなり、母が毎日見守りカメラを確認して、怪しい動きがあれば駆け付けるという生活が1年以上続きました。
そうした状況もあり、おばあちゃんは介護施設に入ることになりました。
半年ぶりに会ったおばあちゃんは、私を覚えていなかった
介護施設に入ってからも、年に3~4回実家に帰省するたびにおばあちゃんに会いに行っていました。
3年前に結婚した夫も毎回連れて行っていましたが、新しい記憶はやはり難しいようで、夫とは会うたびに「はじめまして」でした。
それでも私のことは名前で呼んでくれていたので、「身近な人はなかなか忘れないものなんだな」と少し安心していました。
そして先月、半年ぶりにおばあちゃんに会いに行きました。
その日は、私と夫、妹と母の4人で施設を訪れました。
おばあちゃんはリビングでテレビを眺めていました。
母から「最近ちょっと記憶があいまいになってきている」と聞いていましたが、名前を忘れているくらいかもしれない、とどこかで軽く考えていたところもありました。
でも実際におばあちゃんのそばに立って「久しぶり」と声をかけたとき、その表情を見て、ああ、私のことはもう思い出せないのかもしれない、と感じました。
そのとき、とっさに口から出たのが
「孫のりなです。会いに来ました」
という、少しかしこまった言葉でした。
「いらっしゃい、りなちゃん」と言ってもらえるのではないかと思いましたが、少し困ったように笑って「わからないなあ」と言われたとき、一瞬まわりの音が聞こえなくなるような感覚になりました。
認知症は、思っていたより突然進む
少し前に、「大恋愛」というドラマを見ました。
戸田恵梨香さんとムロツヨシさんが出演している、若年性アルツハイマーをテーマにした作品です。
その中で、主人公のお母さんがこんなことを言う場面があります。
静かにゆっくり、こちらも納得しながら変わっていくのかと思っていました。
このセリフを聞いたとき、「あ、それだ」と思いました。
私も認知症は、そんなふうに進んでいくものだと思っていたからです。
例えば、
「孫だとはわかるけど名前が思い出せない」
「孫がいたことは覚えている」
そんな段階を少しずつ挟みながら、ゆっくり変わっていくものだと、なんとなく思っていました。
でも実際には違いました。
半年ぶりに会ったおばあちゃんの中から、それまで普通に名前を呼んでいた私の記憶がすっぽり抜け落ちていたのです。
想像していたより、ずっと突然の出来事でした。
おばあちゃんに無理に思い出してもらおうとするのはやめた
おばあちゃんの部屋に移動してから、何度か孫だと伝えてみましたが、うまく伝わっていない様子でした。
何度も説明することで、おばあちゃんを困らせてしまうようにも見えたので、途中から無理に思い出してもらおうとするのをやめました。
認知症がだいぶ進んでいるようで、おばあちゃんはにこにこと楽しそうに返事をしてくれますが、会話のキャッチボールはほとんどできません。
それでも楽しそうにしている様子を見ると、私も穏やかな気持ちになりました。
ふと、おばあちゃんの肩に短い髪の毛が付いていることに気づきました。
母によると、今日カットの人が来てくれたとのこと。
そこで私は「髪の毛ついてるから取るね」と声をかけて、肩に付いていた髪の毛をいくつか取りました。
そのあと、おばあちゃんが座っているベッドの柵にそっと手をかけました。
触れていいのか少し迷いながらも、昔みたいに手を握ってくれたらいいなーなんて思いながら。
すると気持ちが通じたのか、おばあちゃんが突然、私の手を両手で包むようにして握ってくれました。
そのまま数分ほど手を握ってくれて、私は一人涙ぽろぽろ、鼻水をだらだらと流していました。(笑)
私のことは覚えていなくても、「なんか優しい人」ぐらいには思ってもらえてるのかなー。
おばあちゃんが忘れてしまった分、私が覚えていようと思う
小さいころから、おばあちゃんはいつも「かわいいね」と言ってくれていました。
おばあちゃんの家に遊びに行くと、「お好み焼きはイカがいい?豚がいい?」と言って、おじいちゃんに自転車で買いに行ってもらったり、「冷凍庫にアイスキャンデーあるよ」と教えてくれたりしました。
商店街を腕を組みながらゆっくり歩いたこともあります。
帰り道に自動販売機を見つけると、「ひやしあめ買ってあげようか」と飲み物を買ってくれるのも、おばあちゃんの定番でした。
でも、もうおばあちゃんとあの頃のような時間を過ごせません。
3年前、結婚して家を出るときに、父から私の成長をまとめたDVDをもらいました。
最近になってそのDVDの存在を思い出し、はじめて再生してみました。
そこには、赤ちゃんだった私をおばあちゃんがお風呂に入れてくれている姿や、神社で抱っこしてくれている姿が映っていました。
おばあちゃんにとっても、あの時間はきっと大切な思い出であり、忘れたくなかったはず(と信じたい)。
だからこそ、おばあちゃんが忘れてしまった分は、私が覚えていようと思います。
次に会うときも、おばあちゃんとまた新しい時間を過ごせたら嬉しいです。

